Artist/
Potter

Motohara
Reico

Artist/Potter

Motohara Reico

works

この場所で 展 [group]

2009年10月24日ー12月20日
静岡市アートギャラリー

はじまりはいつも、土と私とのとても詩的な対話。見えない想いの断片をカタチにする。
土は小さな自然、突き放されることばかり。私の思いが土と共鳴した時、乾燥から1250度の高熱を経て冷却と言う独特の試練をくぐり、それは目の前に存在する。
私と言えば、この世界の片隅で笑ったり、泣いたり、困ったりしている、とても小さな存在。他の誰かと違うようで、あまり変わらない。遠くの国の悲しみは私の心にうまく届かないけれど、小さなシミが形となって現れる。
(本原令子)

日常の、あるいは非日常の間に佇み、ふっと、息を吐く。見落としてしまいそうな、こぼれ落ちそうな感情のかけらをそっと掬いあげて、彼女はカタチをつくる。
本原令子は、自らを「陶芸家」と呼ばない。古より脈々と続く、人と父との関係のある通過点に立つ、1人の「土を扱う作家」と言う。自分にしか見出せない「土」の存在を確かめようと、対話し続ける。
イギリスで陶芸を学んだmotoharaのアトリエの壁には、たくさんの釉の試験片がかけられ、一角には様々な化学物質の瓶が並ぶ。想い描く色にたどり着くまで、何度も何度も試作を試み、釉薬作りに取り組む。強い本原の信念だ。
しかしある時、その表情が降っている。。整形され、乾燥し、いよいよ釜に入ろうとする作品たちに、本原がそっと囁きかける。どうか灼熱の炎の中を無事通り抜けられますように。はかなくも割れてしまった作品に、涙する。いとおしいものえの思いがこみ上げてくる。
そんなmotoharaの手によって生まれた作品たちはどこか誇らしげに、自分たちの物語をそっと語りかけてくるのだ。
(静岡市美術館学芸員)